メルカリの“ワクワク”は創出できたのか?コーポレート部門が挑んだ大型プロジェクトの結果

「メルカリグループは、村から街へ進化しようとしています」

これは、昨年末に公開したメルカン年末企画で、メルカリ代表取締役CEOの山田進太郎が口にした言葉。いちベンチャーから「社会の公器」になるためには大事な過程ですが、一方で「あるもの」が薄れつつありました。

そこで立ち上がったのが「ソウゾウ会議」というプロジェクト。これは、メルカリのコーポレート部門が中心となり、「未来のメルカリの礎」となる制度・施策・働き方に関するアイデアを5チームに分かれて提案。そのうち5つを選出し、実行に移していきます。

ソウゾウ会議の目的は「ワクワクを生み出すカルチャーを創り出す」こと。言ってしまえば、この目的こそが、メルカリグループが「村から街へ」進化するなかで薄れつつあるものでした。

そんな「ワクワクの創出」を目指してスタートしたソウゾウ会議でしたが、その結果は?発起人であるVP of Corporateの横田淳と、アンバサダーを務めた布施健太郎、落合由佳、細田和真が振り返りました。

チームの垣根を越えて「ワクワク」を創出したい

横田:ソウゾウ会議を始めたきっかけは「ワクワクするものをメンバー自らが考え、実行できる組織にしたい」と思ったことでした。というのも、僕はメルカリグループが「村から街へ」進化する過程で、強いコーポレート部門をつくりたいと考えていたんです。そこでまず注力したのが「業務の再構築」「人材や組織の韮(にら)化」でした。

横田:しかし、これだけで強いコーポレート部門ができるわけじゃない。メルカリがここまで急成長できたのは、各メンバーが組織のことを考え、突き進んでいたからこそ。そういった熱量が、上場後のメルカリでは薄れつつあると感じていました。コーポレート部門を統制するだけが、僕の役割ではありません。そこで、各セクションを越えてチームをつくり、メンバーがアイデアを出し合う場として始めたのが「ソウゾウ会議」でした。

プロジェクトを企画したのは、2020年1月。当初は「コーポレート一体となって取り組む」ため、部門のOKRに入れていました。…でも、それが逆にわかりにくかったようで。全社定例でも告知していたのですが、思い返せば「ソウゾウ会議ってなんですか?」という雰囲気が漂っていました。どう盛り上げていくかは、スタート時点からの課題でしたね。

横田淳(VP of Corporate)

横田:そこで「熱量の高い人たちに仲間になってもらうのはどうか?」というアイデアが、運営チーム内から出たんです。そして募ったのが「アンバサダー」でした。今日集まってくれたみなさんは実際にアンバサダーとして参加した人たちですが、そもそもなぜ立候補しようと思ったんですか?

細田:僕がメルカリに入社したのは、2019年2月です。メンバーが急速に増えている時期で「組織として大きく変化しようとしている」感じでした。それに伴う調整ごとも多く、メンバーのなかには変化に戸惑っていたり、モヤモヤを抱えている人もいました。そんな空気を変えたくて、ソウゾウ会議のアンバサダーに立候補しました。

落合:私は入社して1ヶ月も経っていなかったころなので、戸惑いやモヤモヤがあったかどうかはわかりません。ただ、会社のカルチャーをメンバー同士でつくりあげる機会は、めったにないですよね。これまでトップダウンな会社で働くことが多かったので、純粋に「おもしろそう!」と思って参加しました。ソウゾウ会議をきっかけに、人脈づくりもできるといいかなと(笑)。

落合由佳(Corporate Legalチーム)

布施:人脈づくりは、僕も考えていました。コーポレート部門は、各チームが専門性の高い業務を行います。近くにいてもなかなか連携する機会がないので、いいチャンスだと思いました。

横田:まさに、チームの垣根を越えたネットワーク醸成も、ソウゾウ会議で狙っていた効果の一つです。なので、チーム構成はあえてバラバラ。また、経営陣と現場との温度差が出ないよう、VPメンバー+アンバサダーでタッグを組み、チームを引っ張っていく構図にもしていました。

あふれるアイデアをいかにまとめるか?

横田:そして始まったソウゾウ会議ですが、滑り出しはどうでしたか?

布施:ちょっと驚いたのが、「ソウゾウ会議をやるぞ!」となった直後の参加人数が思っていたより少なかったこと。僕にとってメルカリは、新しいことをどんどんやる人ばかりという印象だったので…(苦笑)。

布施健太郎(Public Policyチーム)

細田:僕も同じです。先ほど横田さんも話していましたが「ソウゾウ会議って?」と思っているメンバーが圧倒的に多かった。つまり、テーマがふんわりしすぎていた(笑)。やりたいことはわかるけれど、具体的にどうアクションすればいいのか、みんなに伝わっていないような感じがありましたよね。そこでまずは、プロジェクトに参加してから積極的にほかのメンバーを巻き込んでいくことに着手していきました。その一例として提案したのが、「ソウゾウ会議のSlackチャンネルに、コーポレート部門全員が参加している状態を目指す!」です。

横田:巻き込みに苦戦したのは、僕自身の反省でもあります。それに、ソウゾウ会議でやりたいことを考えているうちに、どんどん構想が大きくなっていったんですよね。アイデアを出すだけではもったいない、もっと実効性を高めるべき…というように、ハードルを上げてしまったのもよくなかったです。

落合:このプロジェクトは巻き込みが大事ですからね。ふわっとしているからこそ、私が最初に意識したのが「アイデア出し」。参加したSlackチャンネルで、いきなり「アイデアを出してください」と言われてもハードルが高すぎます。私からとにかくたくさんアイデアを出して、Slackチャンネルに投稿しました。横田さんに「なにそれ?」と言われることもありましたが、結果的に発言し続けてよかったと思っています。

細田:落合さんがSlackチャンネルでアイデアを出し続けてくれたおかげで、みんなが発言しやすくなったと感じています。あれは、ありがたかった。ただ、プロジェクトの後半フェーズになっても、どのチームからも小粒なアイデアばかりがたくさん出ている状態があったりしたので、ここはアンバサダーを含めた事務局としても少し反省ポイントでした。

細田和真(Group Corporate Planningチーム)

布施:僕のチームでも、わりと抽象的な議論が続いていました。最終段階になって、慌てていくつものアイデアを1つに詰め込んだんですよね。今思えば、一つひとつの提案にフォーカスしすぎていた。発表日が近づくに連れ、アイデアを束ねて、大きな絵を見せる方向でまとめることができました。そのビジョンが、多くのコーポレート部門メンバーから賛同を得られましたね。

細田:それ、わかります。スタート時に「アイデアをたくさん募ろう!」としていたこともあり、まとめきれない状態になっていたんですよね。そこで、事務局内で「アイデアをブラッシュアップする方向へ切り替えよう」と話し合い、各チーム間でアイデアにツッコミを入れ合う機会をつくりました。また、人事制度に関するアイデアなら達夫さん(執行役員CHRO、木下達生)、新しいITツールの導入アイデアならば、須藤さん(Corporate Engineeringマネージャー)にフィードバックをもらっていたんです。方向性を切り替えた結果、最終的にはたくさんのいいプランができました。

オンライン開催での発表当日。「メルカリは死んでない!」

横田:発表は4月2日。新型コロナウイルスの影響で、メルカリグループ全体で在宅勤務が始まっていたため、ソウゾウ会議を延期するかどうか悩んでいました。思い切って進太郎さんに相談してみたところ「オンラインでやっちゃえば?」と言われたんですよね。そして開催に踏み切ったのですが、実際どうでしたか?

落合:何度も言うのですが、ソウゾウ会議の肝は「巻き込み」。そこで、経営陣が審査員をするだけでなく、メンバーによる投票で「ベストアイデア賞」を決めるなど、表彰側も参加型にしました。採点ルールも明確にし、全員の納得感と「参加している感」を醸成するように意識したんです。これが盛り上がる要素になっていて、よかったと思っています。

発表当日、司会を務めたHRBPの小林美咲

横田:当日は、わいわい盛り上がれるような環境として、実況用Slackチャンネルも用意。イベントはGoogle Meet上で開催しましたが、できるかぎり顔出しを推奨していたおかげで安心感があるなかで発表できました。改めて集計してみると、スタートしたばかりのころは50名ほどしかいなかったSlackチャンネルの参加者も100名以上に増え、アイデア投稿数も55個あるとわかりました。

・ pj-souzoukaigiのSlackチャンネル参加数:137人
・ 当日イベント参加者数:最大約100人
・ ソウゾウ会議当日に発表されたアイディア数:14個
・ Slackチャンネルへのアイディア投稿数:55個

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細田:オンラインならではの盛り上がりもあった気がします。実況用Slackチャンネルは、メンバーが思い思いの感想を書き込んだり、落合さんはTEDトークさながらのプレゼンをしていたり!そのなかで、Accounting & Taxチームの深貝さんから「メルカリは死んでない!」という名言も出たりしました。

横田:参加していた進太郎さんも小泉さん(取締役President)も、プレゼンのたびに「いいじゃん!」と、盛り上がっていましたよね。組織が大きくなると、進太郎さんや小泉さんとの距離ができてしまうのですが、基本的には熱量高い人たちだと伝えられたのは、ソウゾウ会議をやった意義があると思っています。そして、メンバー間での活発なやりとりを経営陣たちに焚きつけ、魂に火を灯せた感触もあって正直ホッとしました。

発表当日、審査員としてソウゾウ会議への感想を語る小泉

「ソウゾウ会議」の名前に込めたもの

横田:今日、僕がもっとも聞きたかったのは、ソウゾウ会議の目的だった「ワクワク」をみなさんが感じられたかどうか。発表当日は盛り上がりましたが、肝心な「ワクワク」をアンバサダーのみなさんが感じていないと目的は未達なので。

細田:僕は、プレゼンを通じてとてもワクワクしました!新しいことを、組織全体であれこれ考えながら提案する。この取り組み自体がとても新鮮で、かつ実行につながったものがいくつもあるので、個人的には大成功でした。議論のなかで「何がワクワクか」を何度も話し合いましたが、その1つの答えは「もっと社内外に発信できるコーポレートになろう」だったと思っています。社内だけの盛り上がりで終わらせるのではなく、社外にも「メルカリのコーポレート部門はこんなことをやっているんだ」と伝える機会になればいいなと考えています。

落合:私自身、あれこれやろうと企画しているときが一番ワクワクします。ソウゾウ会議でよかったのは自分が手をあげることで、会社を変えるきっかけをつくれる確信を得られたことです。この会社では、自分さえやる気があればどんどん企んでいける。ソウゾウ会議を通じて、そう実感できました。

布施:僕は、やはりメルカリにはすごいメンバーが集まっていると感じました。そういった人たちと熱量高く一緒に仕事ができるのは、素直にうれしいですよね。そういう意味でも、メルカリに入社してよかった!

横田:よかった!

布施:ただ、今後もやるなら、各チームのOKRに紐付けられていると、メンバーはもっと行動を起こしやすくなるはずです。プロジェクトの位置づけがチームにとっても重要なものになれば、参加意識も高まるのではないでしょうか。

落合:ですね。個人的には、グローバルメンバーも2名ほどチームに参加してもらえてよかったです。ミーティングの際、翻訳に時間がかかるものの、グローバルメンバーを巻き込むことで多様な観点からアイディアを練られたと思っています。今後は、最近入社したAI社員のHISASHIの翻訳機能など活用しながら、より効率的にグローバルメンバーとの連携ができるのではないかと期待しています。

細田:ソウゾウ会議は、良くも悪くもコーポレート部門で完結していました。次は、メルカリやメルペイのプロダクトサイドなど、事業部を巻き込む方法も考えていきたいですよね。メルカリUS(米国事業)も、東京メンバーから巻き込んだりしてもいいかも。

横田:1回目ということもあり、コーポレート部門にフォーカスしていたところがあります。終了後、tamoさん(取締役メルカリジャパンCEO、田面木宏尚)から言われたのは、「コーポレート部門は事業ファーストじゃないの?」。なので、次回は事業ファースト版ソウゾウ会議などニュアンスを変え、それこそメルカリJP、USを巻き込めるといいですね。

横田:そして最後に、これだけお話しさせてください。僕が今回のプロジェクトに「ソウゾウ」と付けたのは、メルカリのグループ会社だったソウゾウのカルチャーが好きだったから。ソウゾウは、新規事業を生み出すことを目的に誕生した会社。そこには、「自分たちでつくっていく」というカルチャーがありました。今回のソウゾウ会議で出たアイデアはしっかり実行していくことはもちろん、メンバーが「自分たちでつくっていく場」として残していきたいですね。

横田淳(Jun Yokota)

株式会社エヌ・ティ・ティ・データを経て、株式会社サイバーエージェントに入社。グループ全体のコーポレート業務に従事する傍ら、多数の新規事業やグループ会社の経営支援、特命案件業務に従事。経営本部長、執行役員を歴任。株式会社 AbemaTV取締役として動画事業の立ち上げ等に尽力。同社を退社後、2017年6月にメルカリ/ソウゾウに入社、執行役員に就任。また、2017年11月には、メルペイの取締役に就任。そして2019年4月からメルカリVP of Corporateに就任。趣味はマグロ釣り。

布施健太郎(Kentaro Fuse)

政策企画で政府のキャッシュレス推進施策を担当。地方議員のほか、医療法人で病院の開発や不動産関係の仕事もしていたので、メルカリの事業でも何か役立てないかを日々考えているところ。読書とお酒を飲むのが趣味。

落合由佳(Yuka Ochiai)

IT法務一筋。日本電気株式会社を経て、ソフトバンクグループ株式会社に入社。ボーダフォン日本法人やダイエーホークス等の企業買収案件や、多数の海外投資案件、資金調達案件を担当。その後、スタートアップであるテレパシージャパン株式会社に飛び込み、会社の立ち上げを経験。オープンドア株式会社(トラベルコ運営会社)の法務部長を経て、メルカリに2020年1月入社。ニューヨーク州弁護士。ペンギンおたく。夢は南極旅行。

細田和真(Kazuma Hosoda)

長瀬産業株式会社に新卒として入社後、PwCコンサルティング合同会社を経て、現職。米国公認会計士(ワシントン州)。メルカリではGroup Corporate Planning team マネージャーとして、事業計画策定・計数分析などの管理会計運用・制度設計等を中心に、コーポレート関連のプロジェクトに従事。ダイエット中。

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